NTT株価は、2023年7月の1:25の大規模な株式分割以降、個人投資家の間で大きな注目を集めてきました。しかし2024年以降、NTT株価は下落基調が続き、2025年12月現在は150円台前半で推移しています。NTT決算の内容や通信業界動向を踏まえると、今後のNTT株価には成長ドライバーとリスク要因が複雑に絡み合っている状況です。本記事では、投資家が知っておくべきNTT株価の現状分析から株価見通しまでを詳しく解説します。
NTT株価の現状と基本情報
直近の株価推移と市場での位置づけ
2025年12月時点において、NTT株価は152円前後で推移しています。2024年4月の高値圏から見ると、約20%超の下落を経験しており、多くの個人投資家が含み損を抱えている状況です。過去1年間の値動きを振り返ると、2024年秋には146円台まで下落する場面がありましたが、同年12月にはディフェンシブ株としての見直し買いが入り、150円台後半を回復して年を越しました。最新の株価・チャート・指標(NTT 9432)
2025年に入ってからは上値の重い展開が続いています。5月にはNTTデータグループに対する大規模TOB(株式公開買付け)の発表があり、TOB費用の負担増が懸念されたことで一時150円を割り込む場面も見られました。その後、8月には160円台後半まで上昇したものの、160円台の定着には至らず、足元は150円台前半での推移となっています。
過去1年間における株価の最高値は165.5円、最低値は138.9円でした。仮に最低価格で購入し最高価格で売却できた場合の最高リターンは約19%となりますが、現実的にはタイミングを見極めることは難しく、株式分割後に購入した投資家の多くは含み損を抱えている状況といえます。
株価に影響する主な要因
NTT株価に影響を与える主な要因は、大きく分けて以下の4つに整理できます。
第一に、業績動向です。直近のNTT決算を見ると、2025年度第2四半期において営業収益6兆7,727億円(前年同期比2.8%増)、営業利益9,450億円(同2.7%増)と増収増益を達成しました。しかし、過去数四半期では利益の伸びが鈍化しており、投資家の期待値を下回る決算が続いていたことが株価下落の一因となっています。決算短信・説明会資料(最新・過去分)
第二に、通信業界全体の競争環境があります。携帯電話市場は成熟化しており、政府の料金値下げ圧力や格安スマホの台頭により、通信単価(ARPU)は年々低下傾向にあります。各社は「非通信分野」への事業シフトを進めており、NTTもこの流れの中にあります。
第三に、有利子負債の増加という財務面のリスクがあります。NTTドコモの完全子会社化(2020年)やNTTデータグループの完全子会社化(2025年)により、有利子負債は12兆円を超える水準まで膨らんでいます。金利上昇局面では支払利息の増加が業績を圧迫する可能性があります。
第四に、NTT法改正を巡る議論です。2024年4月にNTT法が改正され、2025年5月には再改正の見込みがあります。NTT法はユニバーサルサービスの義務など、NTTの経営に一定の制約を課しており、その動向は株価にも間接的に影響します。
投資家が注目するポイント
NTT株価を分析する上で、投資家が特に注目すべきポイントとして、配当政策の動向があります。NTTは14期連続で増配を達成しており、2025年度の年間配当予想は1株当たり5.3円(前期比0.1円増)となっています。配当利回りは約3.5%の水準にあり、高配当株としての魅力は一定程度維持されています。
また、NTTは時価総額ランキングで日本株の上位10位に位置する大型株であり、日経平均株価の採用銘柄でもあります。個人投資家にとっては、100株でも約1万5,000円程度から投資できる手軽さが魅力で、新NISA制度との相性も良好です。
NTTの業績(決算)から読み解く企業の強みと課題
増収増益が続く事業領域の分析
NTT決算を詳しく見ると、成長をけん引しているのは「グローバル・ソリューション事業」です。2025年度第2四半期のNTT決算において、このセグメントは営業収益が前年同期比5.4%増となり、セグメント利益は80.5%増と大幅に伸長しました。これはNTTデータグループによるデータセンター事業の譲渡益(1,295億円)計上が寄与しています。最近の決算内容と将来性の要点整理
データセンター事業は世界的に旺盛な需要が続いており、NTTグループは世界第3位のシェアを誇ります。売上高は前年同期比約30%増と拡大しており、受注残高も2兆2,391億円に達しています。AI・クラウド需要の拡大を背景に、この事業領域は今後も成長が期待されます。
一方、「地域通信事業」(NTT東日本・NTT西日本)も堅調です。法人向けビジネスや光通信サービスの拡大が貢献し、増収幅は190億円と最も営業収益の増加に貢献しました。固定電話の契約数減少という逆風はあるものの、光サービスへの移行促進やDXソリューションの提供により収益基盤を維持しています。
有利子負債増加などのリスク要因
NTTの有利子負債は2025年度中間期末で約14兆4,570億円に達しており、前年同期比で約4兆4,469億円増加しています。この大幅な増加の主因は、NTTデータグループの完全子会社化に伴う資金需要です。
有利子負債の内訳を見ると、ドル建てが約50%、その他外貨建てが約20%、円建てが約30%となっています。また、全体の約40%弱が変動金利での借入となっており、金利上昇局面では支払利息の増加が懸念されます。
NTTグループの自己資本比率はじりじりと下がり、一般的に望ましいとされる30%を直近では下回る水準となっています。ROE(自己資本利益率)は一般的に望ましいとされる8~10%を直近では上回るものの、その勢いは弱くなっています。これらの財務指標の悪化は、株価の重しとなる要因です。
中長期的な収益構造の変化
NTTの収益構造は、大きな変革期を迎えています。かつて売上高の大部分を占めていた電話事業は縮小が続き、代わりにモバイル・インターネット事業(総合ICT事業)とグローバルソリューション事業が主力となっています。
2025年度通期の業績予想では、営業収益が前期比3.5%増の14兆1,900億円、営業利益が7.3%増の1兆7,700億円と増収増益を見込んでいます。中期経営目標として、2027年度にEBITDA(利払い・税引き・償却前利益)を2022年度比で20%増とすることを掲げており、コスト構造改革に取り組んでいます。
注目すべきは「通信×金融」の融合戦略です。2025年10月にはNTTドコモが住信SBIネット銀行を連結子会社化し、銀行業に本格参入しました。新サービスブランド「d NEOBANK」を開始し、dカードやd払いとの連携により金融事業の成長を加速させる方針です。
情報通信業界のトレンドがNTT株価に与える影響
国内通信市場の競争環境
通信業界動向を見ると、国内通信市場は成熟化が進んでいます。総務省のデータによれば、2025年6月末時点の国内携帯電話主要4社のシェアは82.5%で、NTTドコモが33.6%(前年同期比1.4ポイント減)でトップを維持しています。しかし、2025年4~9月期決算では「ドコモ一人負け」の状況が浮き彫りになりました。
NTTドコモは料金プランの見直しを進めたものの、競合他社に比べて顧客獲得で苦戦しています。決算資料には「これまでになく競争は激化した」と記載されており、モバイル通信サービスの収入減が221億円、販促強化の費用増が551億円、ネットワーク強靱化の費用増が148億円と、営業利益を圧迫する要因となっています。
一方、通信業界全体では「非通信領域」へのシフトが加速しています。各社の非通信事業の売上成長率は年率7~11%と好調で、決済プラットフォームやDX/AIソリューションが成長をけん引しています。PayPayの利用率が46%と圧倒的シェアを持つソフトバンクが優位に立つ一方、d払いは16%にとどまっており、NTTグループにとって巻き返しが課題となっています。
グローバル展開や次世代通信技術の動向
NTT株価の将来を占う上で重要なのが、IOWN(Innovative Optical and Wireless Network)構想と6G(第6世代移動通信)への取り組みです。IOWNは、NTTが提唱する次世代通信基盤の構想で、光技術を活用して「大容量」「低遅延」「低消費電力」を実現することを目指しています。
2023年3月にはAPN(All-Photonics Network)IOWN 1.0サービスが開始され、2025年以降にはIOWN 2.0の実現を目指して研究開発が進められています。NTTは2020年に米Intel、SonyとともにIOWN Global Forum(IOWN GF)を設立し、現在の加盟数は84社・団体に達しています。KDDI、楽天モバイルも同フォーラムに加入しており、業界全体での取り組みが進んでいます。
6Gについては、2030年頃のサービス提供開始を目指し、富士通、NEC、Nokiaなどの国内外主要ベンダーと実証実験を進めています。「5G Evolution & 6G powered by IOWN」と称して、NTTとNTTドコモが密接に連携して研究開発に取り組んでいます。
海外展開については、NTTグループの海外売上比率は現在約20%程度ですが、着実に上昇傾向にあります。NTTデータグループはグローバルSI(システムインテグレーション)事業を拡大しており、北米、欧州、アジア太平洋など50以上の国と地域で事業を展開しています。
業界全体での投資戦略・人材戦略の変化
通信業界動向として、各社の設備投資戦略にも変化が見られます。NTTグループは2022年から2027年の5年間で、成長分野に8兆円、既存通信分野に4兆円、合計12兆円の投資計画を推進しています。特にデータセンター、IoT、IOWN関連への投資を重点化しています。
5G基地局の展開状況を見ると、KDDIがSub6やミリ波の基地局を業界最多の約5.6万局展開しているのに対し、NTTドコモは5G SA(Stand Alone)エリアの展開で後れを取っています。Opensignalの5G SA品質調査では調査対象外となるなど、通信品質面での競争力強化が課題となっています。
人材戦略面では、NTTグループは年功序列を廃した人事制度改革を進めています。2021年10月にグループ主要6社の管理職2万人超にジョブ型雇用を導入し、2023年4月からは一般社員向けの新たな人事制度も導入しました。「官僚よりも官僚的」と言われた社風の変革に取り組んでいます。
役員報酬ランキングから見えるNTTの経営体制
高額報酬が示す企業の人材・経営戦略
NTTの役員報酬を見ると、2025年3月期の取締役6名に対する報酬総額は3億6,500万円で、前年比8,400万円の減額となっています。この金額は、情報通信業界の他の大手企業と比較すると控えめな水準です。
情報通信業界では、年収1億円以上の役員が91人存在するとの調査結果があり、ソフトバンクグループなどが上位に位置しています。NTTの役員報酬が相対的に低めに抑えられているのは、元国営企業としての経緯や、財務省が約3分の1の株式を保有する「国家株」としての性格が影響していると考えられます。
NTTグループの従業員の平均年収を見ると、NTTデータが約906万円、NTT東日本が約660万円(平均年齢33歳)などとなっており、大手IT企業の中でも競争力のある水準を維持しています。
企業ガバナンスと株価への間接的影響
NTTのコーポレートガバナンス体制は、監査等委員会設置会社であり、取締役会には独立社外取締役が複数名参加しています。役員報酬については、客観性・透明性を確保するために独立社外取締役の助言を得た上で、取締役会で決定する仕組みとなっています。
中期経営目標の達成度や業績指標が役員賞与の算定に反映される仕組みとなっており、経営陣の利益と株主の利益の一致が図られています。自己株式取得についても積極的で、2025年5月9日には2,000億円(上限)の自己株式取得を決議しています。
他の通信大手との比較
通信大手3社の業績・財務を比較すると、NTTは売上高において圧倒的な規模を誇っています。営業収益はKDDI(約5兆9,179億円)やソフトバンク(約6兆5,443億円)の2倍以上となる約13兆円規模です。
一方、株価パフォーマンスでは、2025年度上期決算において、ソフトバンクが過去最高の売上高を記録して好調な一方、NTTドコモは苦戦が続いています。配当利回りを見ると、NTTは約3.5%、KDDIは約3.0%、ソフトバンクは約4.5%となっており、高配当株としてはソフトバンクが優位に立っています。
NTT株価の将来見通しと投資判断ポイント
中長期で期待される成長ドライバー
NTT株価の株価見通しを考える上で、中長期的な成長ドライバーとして以下の点が挙げられます。
第一に、IOWN/6G技術の実用化です。2030年頃の本格導入を目指すIOWN構想が実現すれば、電力消費の大幅削減やデータセンターの高効率化が期待できます。この技術で世界標準を獲得できれば、NTTの競争力は大きく向上する可能性があります。
第二に、金融事業の拡大です。住信SBIネット銀行の子会社化により、NTTドコモはdカード、d払い、マネックス証券と合わせて「フルラインナップ」の金融サービスを提供できる体制が整いました。9,141万件のドコモ契約数と連携した金融サービスの展開により、新たな収益源の確保が期待されます。長期投資視点での見通しと配当の考え方
第三に、データセンター事業のグローバル展開です。AI・クラウド需要の拡大を背景に、NTTデータグループのデータセンター事業は高成長が続いています。REIT(不動産投資信託)を活用した投資回収サイクルの効率化も進めており、収益性の向上が見込まれます。
想定されるリスクと下落要因
一方で、株価見通しを慎重に見る必要がある要因もあります。
金利上昇による財務コストの増加は最大のリスク要因です。12兆円を超える有利子負債を抱える中、金利が1%上昇した場合の支払利息増加は約1,000億円以上となる可能性があり、これは最終利益の10%以上に相当します。
モバイル事業の競争激化も懸念材料です。NTTドコモの顧客獲得が競合他社に後れを取る状況が続いており、通信品質の改善投資も収益を圧迫しています。格安スマホへの顧客流出やARPU(顧客1人当たりの利用額)の低下も継続しています。
IOWN/6G技術については、研究開発段階であり、2025年現在は利益貢献に至っていません。2030年以降の本格稼働までには時間を要し、その間は投資負担が先行する展開が予想されます。
投資家がチェックすべきKPI・ニュース
NTT株への投資を検討する上で、定期的にチェックすべき指標・ニュースとして以下が挙げられます。
財務指標では、四半期ごとの営業収益・営業利益の推移に加え、有利子負債の増減、自己資本比率、ROE、配当予想の変更などを確認することが重要です。セグメント別では、グローバル・ソリューション事業と総合ICT事業の収益動向が特に注目されます。
事業関連では、IOWN/6Gの研究開発進捗、データセンター事業の受注高・受注残高、住信SBIネット銀行との連携による金融事業の成長などをフォローすべきです。競争環境の変化として、NTTドコモの契約純増数や解約率、MNP(番号ポータビリティ)の動向も重要な指標です。
マクロ環境では、金利動向(特に変動金利の上昇リスク)、為替動向(海外売上への影響)、NTT法改正の動向なども株価に影響を与える可能性があります。
NTT株を買うべきか?投資家向けまとめ
どんな投資スタイルに向いているか
NTT株価の特性を踏まえると、長期投資スタイルの投資家に適した銘柄といえます。短期的な値上がり益を狙うにはボラティリティが低く、成長株のような急騰も期待しにくい一方、ディフェンシブ株として安定した配当収入を得ながら保有するには適しています。
100株単位で約1万5,000円から投資できるため、新NISA(少額投資非課税制度)の成長投資枠を活用した積立投資にも向いています。株価下落時に買い増す「ドルコスト平均法」を実践しやすい価格帯であり、長期的な視点で保有することで、配当と将来的な株価回復の両方を狙う戦略が考えられます。NTT株は今後どうなる?配当と見通しの解説
一方、デイトレードなど短期売買を目的とする投資家には不向きです。株価の値動きは緩やかで、1年以内に大きなリターンを得ることは難しいでしょう。また、高配当を重視する投資家にとっても、配当利回りが約3.5%と突出して高いわけではないため、より高配当の銘柄と比較検討する必要があります。
今後の注目ポイントの総まとめ
NTT株への投資判断において、以下のポイントを総合的に考慮することが重要です。
強みとして、日本最大の通信インフラ企業としての安定した収益基盤、14期連続増配の実績、IOWN/6Gにおける技術的リーダーシップ、データセンター事業の世界トップクラスのシェア、住信SBIネット銀行の子会社化による金融事業の本格展開などが挙げられます。
課題・リスクとして、12兆円超の有利子負債と金利上昇リスク、モバイル事業における競争激化とドコモの苦戦、IOWN技術の収益化までの時間差、自己資本比率の低下傾向などがあります。
アナリストの平均目標株価は179円程度であり、現在の株価水準(152円前後)から約14%の上昇余地があるとの見方がされています。ただし、株価が直ちに急浮上する可能性は低く、2027年までの経営改革の進捗やNTTデータの躍進、配当政策の動向が株価を左右する重要な要素となるでしょう。
最後に:長期投資としての魅力と判断材料
NTT株価は、2024年以降の下落を経て、一定の割安感が出てきている段階にあります。過去の下落局面では高値から30%程度の下落で底打ちする傾向があり、現在の株価水準は長期投資の開始点として検討に値する水準といえます。
重要なのは、NTTが「単なる通信会社」から「総合ICT・金融プラットフォーム企業」への転換を進めている点です。この構造転換が成功すれば、IOWN技術の収益化が本格化する2030年代に向けて、企業価値の向上が期待できます。
投資判断にあたっては、以下の点を自身の投資方針と照らし合わせて検討することをお勧めします。保有期間として5年以上の長期投資を前提にできるか、配当収入を重視しつつ株価変動に耐えられるか、通信業界の構造変化と技術革新の動向をフォローし続けられるか、といった点です。
NTT株価は、安定性と成長性のバランスを求める長期投資家にとって、引き続き検討に値する銘柄といえるでしょう。ただし、投資は自己責任で行い、ポートフォリオ全体のバランスを考慮した上で、分散投資の一環として位置づけることが賢明です。

