IT業界に興味がある人:IT業界で働いてみたい。でもIT業界は忙しくて残業が多いイメージがある。実際にIT企業で働いている人の話を聞きたい。
タクミです。IT企業で働いて6年目になります。
社会人6年目になると、学生時代にわからなかった「なぜ残業は増えてしまうのか」がわかるようになります。
今回は、特に残業が多いと言われているIT企業に勤めている私が、社会人6年目になって体感している「残業が増えてしまう理由」についてまとめました。
就職活動・転職活動をしていてIT企業に興味のある学生、社会人の方の参考になれば幸いです。
IT企業は労働時間が長い?残業が増えてしまうその理由は?
IT企業で残業が増える理由1:仕事のゴールがころころ変わるから。
IT企業の定義は複数あります。今回は「システム開発」をするSIer(エスアイアー)企業、もしくはシステム開発の仕事について話します。
システム開発では、お客様の求めるウェブサイトやシステムを開発します。
システム開発は、理想としては「開発スケジュール内にお客様の要求を満たすシステムを開発すること」です。
しかしこれが非常に難しいのです。なぜなら「理想的なシステムのイメージは人によって異なる」からです。
お客様から「もっと使いやすいデザインにしてほしい」という要望を受けた場合に、シンプルなデザインが好きな人もいれば、機能が豊富なデザインが好きな人もいます。
そのため、システム開発の初期に要件を具体的に決める(仕様調整)のですが、サンプルを提供した段階で「思っていたデザイン・機能と違う」と修正がたびたび入ります。
お客様はシステムに詳しいとは限りません。そしてシステム開発者もお客様の業務に詳しいわけではありません。そのため、システム開発ではほぼ確実に仕様変更が入り、スケジュールを変更する必要があります。
しかし納期はずらずことはできないため、残業や休日出勤でスケジュールに間に合わせる必要があり、労働時間が増えるわけです。
システム開発はゴールが明確になりにくいからこそ、予定外の作業が必ず発生してしまい、労働時間が増えてしまうのですね。
IT企業で残業が増える理由2:資料作成に終わりがないから。
システム開発はプログラミングをしてシステムを構築する作業です。
しかしどのようなシステムにするかを示した設計図(画面レイアウト、画面遷移図、画面設計書など)がない状態では、プログラミングはできません。
これはミシュランのシェフになる料理の技量がある人(プログラマー)であっても、レシピ(システム設計図)がなければ一流の料理(お客様が求めるシステム)を作れないのと同じです。
そこでSIer企業に勤めるシステムエンジニアは、これから作るシステムのイメージを資料に書く必要があります。
資料はOffice(Excel、Word、Powerpointなど)で作ります。しかし「資料作成には終わりがない」のです。
システムの設計書は、お客様にとってもプログラマーにとってもわかりやすいものが理想的です。しかしシステムの設計はITの専門用語を多用する必要があり、お客様向けにはわかりやすく噛み砕いた説明が必要になります。
一方でお客様にわかりやすい資料がプログラマーにとってもわかりやすいことはありません。そのため、内部用の資料は細かく設計やパラメータを記載する必要があります。
このように1つのシステムを作るために資料の数が膨大になります。そのため、資料作成にかかる時間が労働時間のほとんどを占めます。
資料作成はこだわろうとすればいくらでも時間をかけられます。そのため労働時間が増えてしまうわけです。
IT企業で残業が増える理由3:もともとスケジュールがギリギリだから。
システム開発が難しいのは「システム開発のスケジュールがもともとギリギリだから」です。
システム開発をするには人手が必要ですから、当然「お金」がかかります。ほとんどは人件費になりますので、「システム開発の日数」で予算が決まります。
お客様からすればできるだけシステム開発の予算は抑えたいのは当然ですし、仕事を取るには他社との競争に勝たないといけないので、「システム開発の日数」を見積もったとしても、ギリギリまでスケジュールを短くして予算を減らす必要があります。
そのため、システム開発は限られた予算の中でやる必要があり、人を増やせず、スケジュールもタイトな状態でスタートすることになります。
そのため、一旦予定外の仕様変更が発生したり、作業に遅延が発生すると、スケジュールのリカバリをするのが難しい状態になるわけです。
IT業界では人手不足といわれていますが、潤沢な予算と人がいるシステム開発はほとんどありません。そのため、少数精鋭でマンパワーでリカバリする必要があり、労働時間が増えてしまうわけです。
IT企業で残業が増える理由4:システム開発は高度な知識が必要だから。
システム開発は高度な知識が必要になるため、知識の取得や理解に時間がかかります。
先ほどの例でミシュランのシェフの話を出しました。想像してほしいのですが、料理をしたことがない人が、ミシュランのレストランのシェフを代理でやってくれといわれたら、いくらレシピや一流の食材があっても大変ですよね。
なぜなら料理全般の用語や常識、塩加減、パスタの茹でる時間、ダシの取り方など、高度な料理を作るには膨大な知識と経験、センスが必要になるからです。
システム開発も同じです。学生時代に情報系の学科に所属していた人であれば「ITの知識」は抑えていると思いますが、システム開発はITの知識だけでなく、「経験」と「センス」が必要です。
私は学生時代は農学部でITは未経験でした。そのため「ITの知識の取得」に時間がかかりました。さらにITの分野は日々、新しい技術が世界中からでてくるので、常に勉強していないとついていけなくなります。
また、スケジュール管理の勉強、コストの計算方法、システムテストの品質の評価方法など、ありとあらゆる知識がないとシステム開発はできません。
もちろんシステムに詳しい人に囲まれた環境であるので、特的の分野に詳しい人と協力しながらシステム開発することになります。しかし自分自身がシステムに詳しくなければ、知識の取得に膨大な時間がかかってしまうのです。
システム開発は知識と経験が必要です。どちらかが欠けている若手のうちはどうしても労働時間が増えてしまいがちです。
まとめ。IT企業は正直大変。しかし実力はつく。
IT企業で働くことはかなり大変です。
IT企業に入社する人は「労働時間」については、残業が多いことを知った上で入社する人が多いと思いますが、それでも働いてみないと実感がわかない部分だと思います。
またIT企業で一括りすることは難しく、入社する企業や担当部署によっても働き方が大きく変わるリスクがあります。
もし残業が少ない仕事であったとしても、平日の空き時間や週末は勉強に時間を使う必要があります。この時間は労働時間に含まれませんので、IT企業は「常に仕事について考えていたい人」以外には向かないと思います。
しかし、タフな働き方が求められる業界ではありますが、私はIT企業に入社してよかったと思っています。それは「将来の仕事の不安がなくなったから」です。
社会人になると途端に勉強をしなくなる人がいます。しかしIT企業では常に勉強が必要になるので、資格や知識が年々増えていきます。
またシステム開発の上流工程と呼ばれるお客様調整などの高度な仕事に関わることができれば、転職でも困ることはありません。
さらに転職は年齢が若い方が有利といわれますが、IT業界では実力があれば30代後半〜50代でも転職が可能です。
転職が多いのはIT業界特有です。ネガティブな理由は「残業が多い」「ITに興味がない」というものですが、ほとんどの人はポジティブな理由で「年収を増やしたい」「やりたい技術がある」という理由で、同業のIT企業に行く人もいれば、事業会社のIT部門に転職する人もいて、引く手数多です。
さらにシステム開発やプログラミングができるスキルがある人であれば、個人で仕事を受注して独立することも可能です。
IT業界で働くのはタフですし、誰にでもオススメというわけではありません。しかしITの知識がつき、実力がつけば若くして仕事に困らない状態になるので、むしろ安定志向の人に向いているのではと思います。
今回はIT業界で労働時間が長くなってしまう理由についてまとめました。
IT業界に興味がある人、就職・転職を考えている人の参考になれば嬉しいです。