タクミです。30代前半の男です。
「人生後半の戦略書」という本を読みました。
こちらの本が大変興味深いものでした。
結論としては「人生の前半の戦略と後半の戦略は異なる。前半の戦略で成功したとしても、同じ方法では人生の後半は成功できない」というものです。
情報のボリュームが多く咀嚼しきれていない点もありますが、私が気に入ったポイントをご紹介します。
【書評】「人生後半の戦略書」が素晴らしい
成功したい人は多いが成功した幸福は長続きしない
まず記憶に残ったのは「成功を手にしたことによる幸福は長続きしない」ということです。
本書の冒頭では、一般的には成功者と呼ばれる人の人生を一例として
「成功した人でも、なぜか幸福が継続しない」という点に焦点をあてています。
この理由について「成功による幸福を感じるのは一過性のものであるから」と述べています。
例えば企業で成功して巨万の富を得る、スポーツのプロの世界で成功する、芸能で活躍するなど、誰がみても羨む成功をしたとしても、
当の本人は幸福が長続きせず苦しむようです。
その理由は「成功することで幸福を感じることはできるが、幸福を継続することはできないから」と述べています。
例えば、会社員で大成功して出世した役員の人でも、引退後は誰からも相手にされず苦しむことを例えに出しています。
一般的な例を出してみても、長年の猛勉強により希望の大学に進学する、世間体の良い大企業に就職する、昇格して給与が増える、など一時的には嬉しいことも喜びは長続きしないものです。
しかしながら、「人は一回でも成功してしまえば生涯に渡って成功が継続する」と考えてしまうので、現実のギャップに苦しむことが述べられています。
目を背けたい現実:「年齢」が人生に制限をかける
本書ではある「年齢」を境にして、人生の行動戦略を柔軟に変更するべきと主張しています。
冒頭では、著者が20歳前後の若い頃に音楽の道を極めようとして学業をドロップアウトしたものの、とある年齢から演奏の技量が伸び悩んだエピソードがでてきます。
プロのスポーツ選手が活躍できる「選手寿命」は30代前半と言われます。
私は33歳ですが、同い年の33歳の人で、肉体的にピークになる種目は少ないでしょう。
プロ野球でも20代中盤〜後半あたりがピークになりますし、生涯現役を目指した一流選手も、40歳以降に好成績を出した選手はいません。
目を背けたい現実ですが、明らかに「年齢」によって、人生のピーク時期は存在します。
幸いにして、私のようなデスクワーク中心の会社員であれば、30代前半といえば若手から中堅への移行の時期で、仕事のピークはまだ先です。
20代と比較すると、明らかに体力、気力が衰え始めた気がしますが、まだまだ無理もできる年齢です。
しかし、本書では出世を目指して20代〜30代をバリバリ仕事をしてきた人が、40代以降になりいくら努力してもパフォーマンスが上がらない例が出てきます。
むしろ、20代〜30代に時間と体力の余す限り、仕事に全集中してきた人ほど、40代以降も同じ方法を継続しようとしてしまい、肝心の体力、気力がついてこない、という罠にハマってしまうようです。
本書で人生後半の戦略書というタイトルがついているのは、「若いうちに活躍できるやり方と、人生後半の活躍できるやり方は違う」という点に着目しているからです。
「流動性知能」と「結晶性知能」を知り戦略を再考する
本書では、加齢に伴うパフォーマンスの低下を認めたくないあまりに、若い時と同じ戦略で仕事をしてうまくいかないケースをあげています。
それでは年齢を重ねるごとに諦めるしかないのかというと、そうではないというのが本書の一番のポイントです。
キーワードは「流動性知能」と「結晶性知能」です。
難しそうな言葉ですが、流動性知能は一般的にイメージできる頭の良さを差し、例えば数学的思考力、発想力、情報処理能力、記憶力などを指します。
人生の若いうちは流動性知能が優れている方が有利です。なぜなら大学受験や業務の処理能力のスピード、正確性、新しいアイディアなどは、流動性知能を活用するためです。
特に物理数学系の研究でノーベル賞をとる人は、大抵は20代〜30代前半で論文のアイディアを出しているようです。
このように、人生前半は流動性知能をいかに高めるか、もしくはいかに生まれ持った遺伝子が流動性知能を高い状態にしてくれるか、にかかっています。
一方で、流動性知能は加齢に伴い衰えます。そのため早熟で成功した学者や音楽家は、キャリアを重ねても流動性知能は衰える一方のため、若い頃のパフォーマンスを越えられず苦悩するようです。
そこで結晶性知能が登場します。こちらは知識や経験の量によって、それを組み合わせることで能力を発揮するようなもので、こちらは晩年までパフォーマンスが伸び続けるようです。
例えば言語能力などは晩年の方が伸びるようですので、教師や教授は若い人よりもベテランを選んだ方が良いと述べています。
本書では、最適な成功例として、若いうちに流動性知能を駆使して成果をあげ、晩年はその実績を元にして、結晶性知能を用いて講師業をするのが良い、と述べています。
まとめ。
「人生後半の戦略書」では「若いうちと晩年では、伸びるスキルとそうでないスキルが異なるのだから、年齢が上がるにつれて若い時のやり方を脱却した方がうまくいく」と述べています。
また、成功を追い求めて仮にうまくいっても、成功は一過性の幸福にしかならないのだから、現実に満足する工夫をすべし、ということも本書には述べられています。
私の例や身近な人をみていても、本書で書かれていることが当てはまると思うことがいくつもあります。
例えば会社の上司で20代〜30代はバリバリ仕事をこなしていた人が、40代以降に体を壊しがちになる例はよく見ます。
若い頃はどんな人でも体力と気力まかせに仕事をできるのですが、次第に体力、気力が衰えているにもかかわらず、若い頃と同じやりかたをして、体を壊してしまった例です。
また、憧れていた大学、安定的な企業に入ったのに、「このままでいいのか」と現状に満足できずにもがいている人もいます。
これは私のことで、20代の頃に憧れていた行きたい場所、やりたいこと、理想的な生活など、ほぼ全て満たしたにもかかわらず、「もっと満足できる方法があるのではないか」と想像してしまっています。
他にも以下に記載したような目標を達成すれば、他はもういいかも、と思っていた時期もありますが、仮に以下のような目標を達成しても、幸福な期間は数日しか持ちません。
よくある目標の例(私の場合)
- 東大に入れたらそれだけで人生満足だ
- 一度でも3つ星レストランで食事をし、5つ星ホテルに泊まれたら人生満足だ
- 一度でも港区や、都内のタワーマンションに住めたら満足だ
- 30代前半で課長補佐級の役職に昇格できたら満足だ
- 30代のうちに2000万円を資産運用できればもう人生安泰だ
上記のような目標は具体的ですし、20代の頃の私としては、人生のうちで一度は体験してみたいと思ったものでした。
そして、確かに体験しないよりは体験した方が満足はできるのですが、持続力が弱く、常に新しい目標が必要になります。(その結果、現在は「難関資格に合格したらきっといい人生が待っている!」という状態になっています笑)
本書でも「仕事で成功できるなら家族は犠牲にしても良い」「名声が手に入るなら若いうちに成功して晩年は失敗してもいい」というように、成功中毒、名声中毒の人の例が出てきます。
中毒になるくらい、仕事でうまくいくこと、報酬を得ること、名声を得ることは、人間の本能的な欲求なわけです(合理的かは置いておきます)。
もちろん、お金も名声もあるにこしたことはありませんが、近年のミニマリストブームにあるように、楽しく生活するには高級車は3台も5台もいりませんし、回らない寿司も煌びやかなフレンチも1日5回も食べられません。
本書を読むと「足るを知る」という言葉がしっくりくるようになります。
特に私のように30代の方は、20代から40代の間の転換期です。
勉強も短期記憶のスキルは落ちてきますし、体型的にも脂肪が溜まりやすくなります。
仕事も目の前の自分の作業をこなすだけではなく、チーム全体を意識して行動することがより一層要求されます。
つまり20代は、たまたまうまく行った勉強方法や食事・運動方法、仕事の方法を、30代になったら少しずつ変えていく必要があります。
また成功中毒からの脱却の必要性も高まります。
仕事や仕事関連の勉強、お金の管理など、生活に直結することに時間を割くのは良いことですが、
それだけで終わりにせず、家族との時間、両親との時間、友人との時間、1人で日記を書いて内省する時間をとっていこうと思います。
本の数ページ分しか紹介できていませんが、本書は私に当てはまる記載が多く面白かったので紹介させていただきました。
ぜひ興味がある方は読んでみてください。